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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「フォックスキャッチャー」
デイヴが殺されるのに説得力がないと言う感想が多いとようですが、ジョンがデイヴの周囲の円満な溢れる愛情を目にした後、自分には金で寄せ集めた称賛しかないと、戦慄するような孤独を噛み締めた後の惨劇だったので、私には納得出来ました。
マークやデイヴの妻存命の中、この手の作品の映像化は難しいはず。内容もさることながら、私が非常に感銘を受けたのは、登場人物一人一人、殺人を犯したジョンでさえ、観る者が彼らに寄り添い、理解できるような描き方です。この品格ある作りのお蔭で、ただの悲劇を描くに終わらず、自分の人生の糧になるような素晴らしい作品になったと思います。
カレルは最初誰だかわからず、こんな鉤鼻だったっけ?と不思議でしたが、特殊メイクをしたそう。喜怒哀楽を全く出さず、常に不気味で不穏な得体の知れないジョン。常に顎を上げて物を言う姿は、彼に意見する人などいないのがわかります。しかし尊大でも傲慢でもなかった彼。それだけに哀しさが伝わってくるのです。カレルのオスカーノミニーにも納得です。
テイタムも画像のように、いつも眉間に皺を寄せて苦悶の表情ばかり。今までアクションや軽い娯楽作の彼しか知らなかったので、今回の好演にはびっくり。テイタムのターニングポイント的作品になるかも。
事件捜査の過程で、ジョンには精神的な失調があったと解釈した向きが強かったようで、この作品でも伺えます。しかし感情を爆発させる時は、自傷的な行為に及ぶマークの様子と共に、それが何から来るのか?と想起させる作りは、決して差別感を助長させるものではないと思います。孤独ほど辛く恐ろしいものはないのだと、私は強く思いました。そして二人は、決して孤独ではなかったのに。大事なのは、孤独感を与えない事だと思います。
ラファロは、彼のセルフイメージを最大限に活用した好演で、強烈な負のオーラまとった二人に比べ、常識的で誠実な良い人と言うのは、主要三人の中で、一番演じるのが難しかったはず。それがオスカーで助演候補になった要因でしょう。とても素敵でした。彼の大ファンなので、是非オスカー取って欲しいです!
ラスト、マークに向けられる「USA!」の大声援。これが現役の頃ならどんなに励みになったかと、皮肉でした。現在彼はプロレス教室を開いているそうで、映画は苦悶と怒りに満ちた彼の顔で終わったので、この挿入には救われた気になりました。オスカーには他にベネットが監督賞にノミニーですが、作品賞はなし。何故なんだろう?デュポン社から横やりが入ったのかしら?でもそんな事関係ないや。ベネット・ミラーに、一生ついて行こうと決意する作品でした。
02月22日(日)
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