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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「そこのみにて光輝く」
拓児が祭りへ寄り道した時、行っちゃダメ!と思いました。人には危険を回避しようとする知恵がありますが、拓児にはそれがない。事件を起こしますが、この感情の爆発は理解出来るだけに、とても哀しい。とにかく菅田将暉の「底辺」の青年っぷりが、上手くって。無知の哀れを一番感じるのは、彼でした。
底辺の描き方も上手い。酒・タバコ・パチンコの場面がたくさん出てきます。これらは小銭でも出来る嗜好やギャンブルです。お手軽な快楽しか手が出せないのです。私は全部やりません。それは少しでも貯金して、映画を観たり旅行したり、そちらに回す希望があるから。この三つは人生の希望のなさを表現する道具だと思いました。
池脇千鶴は「ジョセと虎と魚たち」でも思い切りよく脱いでいましたが、あれから10年以上、またまた思い切りよく脱いでます。肉付きもよくなって、チーちゃん30代だもんなぁと、変に感慨深い気分に。この気風の良さは、ヨーロッパの女優さんみたいです。絶望から愛が芽生えて、そこからくるくる変わる女心も、しっとりと演じています。
綾野剛や菅田将暉は上記の通り。懐深さは、過去に色々あったのだろうと想起させる火野正平は存在感抜群で、芸歴の長さを感じさせます。粗暴な愛人高橋和也は、下衆な中に牡の哀しみを的確に表現するなんて、ちょっと感激です。伊佐山ひろ子も、どうしようもない母親です感いっぱいで、だから拓児に涙する場面が引き立つのだと思います。
いくらでもまた絶望に戻りそうな状況を、そうさせなかったラスト。「そこのみにて光輝く」だけだった人達は、きっとそこ以外でも輝いてくれるのではないか?私は殺風景な達夫の部屋で、行儀悪くカップラーメンをすする千夏の姿が好きです。嫌いな人と食べる豪勢なディナーより、愛する人と食べるカップラーメンは、さぞ美味しかったはず。愛を知る、このシンプルな事が、人生を変えてくれると教えてくれる作品。
04月27日(日)
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