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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「最愛の大地」
こういった繊細な演出が随所に見られます。戦場下で性的に弄ばれた女性たちは、興味本位な目で見られがちですが、アイラや他の女性を通して、当時決して娼婦性を持って生きていたのではないと、監督は言いたかったのだ感じました。
アイラは被害者でもあり加害者ともなりました。ダニエルも、アイラの姉も。戦争とは結局そう言うものだと、その虚しさと辛さを、ダニエルとアイラの愛に込めて描いていたのだと思います。何もかも捨て、本当は身も心もダニエルに委ねたい。でも心の底を自ら凍らせてダニエルに接していたアイラは、どんなに辛かったでしょう。彼女の「ごめんなさい」には、その万感の思いが込められていたと思います。ダニエルの「俺は戦犯だ」の言葉はこそ、アイラの意を汲み、彼女への愛情を示す言葉であり、決して絶望からではないと、私は思います。そして自分を育んでくれた最愛の大地であるボスニアの地への、彼の贖罪だと思いました。
反戦映画であると共に、秀逸なメロドラマだとも感じました。とても力強い作品です。セルビアの誠実そうな兵士が、「もうじき妻に子供が生まれる」と微笑むシーンがありますが、それに同調してはいけないのです。彼もきっと、捕虜の女性たちを陵辱していたはず。それが平和のためだと思い込まされる怖さを感じなければ。そして軍事介入と言えば、いつもきな臭いものではないとも知りました。もっと早く国連が介入していれば、この紛争の終焉も早まったはずだと描いています。この辺は素直に受け取りたいと思いました。
この紛争で生まれた赤ちゃんたちは、どうなったのでしょう?アイラが強い意思を持ち続けられたのは、姉の赤ちゃんの事が影を落としているはず。「サラエボの花」「あなたになら言える秘密のこと」が、その後を描いているはずです。私は未見なので、是非観ようと思っています。
08月22日(木)
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