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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「君と歩く世界」
ステファニーに配慮のなさを指摘され、致命的に姉を傷つけたアリ。どん底の状態で彼が見たのは、目を背けていたのではなく、目にも入らなかった未熟な自分です。自分の持てる唯一の長所で再起をはかる彼。そこで起こった出来事で、格闘技以外で、アリは初めて血を流し骨折したはずです。その痛みには爽快さはなく、アリが本当に父親になるための試練だったのでしょう。そして体だけではなく、初めて心から異性を愛する意味を知る出来事だったのだと思います。「愛している」。平凡な言葉が、この未熟な男から発せられると、とてもカタルシスがありました。

マリオンは絶望の淵からハードボイルドに至るまでを、ほとんどノーメイクで熱演。外見は変わらないのに、心の変遷が手に取るようにわかります。マティアスは初めて観ましたが、アリと言う大人子供が、とても愛しく思えるのです。二人共超チャーミングでした。

骨折すると、再生する骨の周囲がカルシウムで強化され、以前より強くなるが、決して元の姿に戻る事はない、と言う独白がラストに入ります。新しい姿は、アリとステファニーそれぞれ。劇中ずっとアリの事を名前で呼んでいた息子ですが、アリの骨折が治る時、きっと「パパ」と呼んでくれるでしょう。

04月11日(木)
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