ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[927785hit]
■「アルバート氏の人生」
ラストの展開は、とても複雑で切ない気持ちになりました。私の大好きなガルシア監督の作品とそっくりなのです(題名を出すとネタバレになるので、敢えて秘す)。この時代イングランドには、もうマグダレン修道院はあったと思います。自分の恋する相手に泣かれて抱きつかれた時の、あの華やかな満ち足りたアルバートの笑顔が、私は忘れられません。孤独を癒す事が愛だと思っていた彼が、初めて人を愛する意味を自覚した瞬間だと思います。ヒューバートの決意は、性を超えたアルバートの人生に、敬意と親愛を捧げたいからです。そのお陰で、アルバートの愛する人はマグダレン修道院に行く事もないでしょう。とある事で、一生彼を忘れないであろうと感じさせます。とても切ないのですが、思えばこの展開は、アルバートが生涯かけて残した物が起因するものです。そう思うと、アルバートの人生が報われたような気がして、涙と共に、暖い感情が心に広がっていくのがわかりました。
クローズの他にも、ヒューバート役のマクティアも絶品だったし、可憐で愛らしいミア、粗野で無学な事の悲しさを、瑞々しい若さで演じたアーロンのコンビも、とても素晴らしい。忘れちゃならないのが、コリンズ。敵役を一手に引き受けるやり手の因業バアさんですが、長い芸歴が伊達じゃない憎々しさで、作品を盛り立てていました。
アルバートの真実を知ったホテル付きのドクターは、「嘘の人生は、もう嫌だ」の言葉を残して、ホテルを去って行きます。ただのスキャンダルとして反応するベイカー夫人とは、対照的です。抑圧されたアルバートの人生を観て、何を感じ何を救い取るかは、人それぞれなのでしょう。せっかくこの作品で得た私の感情、実生活で生かしたいと思います。過去を描きながら、現代に生きる者に教える、温故知新な作品。
01月27日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る