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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「少年は残酷な弓を射る」
しかし子供と共に子育ての喜怒哀楽を知り、お互いに妥協点を見つけて受け入れて行く。多くの親子がそのはずです。それが出来ないケビン。母親を小馬鹿にし憎悪し続ける姿は、「僕だけを観て欲しい」強烈な母への愛情に思えました。
わざと脱糞する幼い息子に怒り、壁に投げつけたエヴァ。ケビンは骨折します。本当の理由を息子は父親には言いません。罪悪感に苛まれ息子に謝罪する母ですが、やはり息子と向き合いません。あの時のケヴィンは、「母親ならこうするはず」の公式から外れた、素の母に出会い嬉しかったのでしょう。それが暴行であれ。エヴァは母として「ねばならない」に縛られ、感情の発露を見せません。それを露悪的に表現したのがケビンの行動だったのでしょう。きっと彼も、自分のしている事の本質はわからなかったはずです。
街中の人がエヴァを憎み無視する。それはケヴィンのしでかした事のせい。この様子が常軌を逸しています。違う街に引越しも出来たはずなのに、地獄の中でたった一人息を潜めて生活するエヴァ。夫も、年の離れた愛らしいケヴィンの妹もいない。何故たった一人エヴァが残されたのか?その理由に行き着いた時、自分こそ息子より重い罰を受けなくてはいけない、彼女はそう考え町にとどまったのだと思いました。
母「何故あんな事したの?」息子「その時はわかっていたつもりだ。でも今はわからない」。わかるのには、もっともっと時間がかかるかもしれない。息子のTシャツにアイロンをあて、彼の「帰り」を待つ母は、以前の母ではありません。心から息子を愛する母なのです。紆余曲折と言う言葉では生優しすぎる母と息子の愛の軌跡。あぁ私は凡庸な母親で良かったと、同じく凡庸で鈍感な息子たちに感謝したくなった作品です。
07月12日(木)
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