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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「サニー 永遠の仲間たち」
どれもこれも秀逸なエピソードなのですが、気になる箇所が二つ。サニーたちが、イジメを受けるナミの娘を救う場面ですが、救急車送りの者を出して、あの仕舞い方は如何なものか?ナミの夫はエリートだし、学校関係もあれでは済まないのでは?もう少し練って欲しかったです。これ以上に気になったのが、上記のシンナーのせいでサニーから除外された少女の事。演じた少女の好演もあって、この子の背景やその後を知りたく思いました。あのまま救済がないのは、ちょっと冷たくはないか?ナミがデッサンを手渡すシーンは、私は要らないと思ったので、そこはぶいて、この子の行く末を描いて欲しかったです。

この作品が韓国で大きな観客動員を生んだのは、女性開放の祈りが込められているからでしょう。顔を整形しただけではなく、性格まで猫を被って変えたメンバーのジニは、ひとえに玉の輿に乗りたかったからでしょうね。恵まれすぎていると感じるナミは、夫の甲斐性に感謝を通り越して引け目すら感じているようです。家庭を守らなければ申し訳ない、そのため長い間、自分の人生の主役は夫と子供になっています。

夫の浮気に、すったもんだしたあげく目をつぶるジニに、メンバーの一人チュンミは「韓国の女は結局は男に従うんだよ」と言い、独身のチュナの葬儀は「独身だと寂しいもんだわ。だからあんた、離婚しないの?」と、ジニに言います。並みの男以上の出世をしたチュナは、人に言われぬ苦労の連続だったはず。しかしチュナの死を心から哀しむ親友とて、無意識にこんな言葉を吐くのです。これが韓国の現状なのでしょう。

それを鮮やかに救ったのがチュナの遺言です。サニーのリーダーだった彼女は、友情を永遠に誓い、メンバーの苦境には駆けつけると約束していました。頑張っても頑張っても、陰ではあれこれ言われたろうチュナの人生の、私は一世一代の女の意地が、あの遺言だったのではと思います。

同じような筋書きのドラマの連続にブーイングの入院中のお婆ちゃんたちや、敵対グループのリーダーに言わせる言葉などに表現されるように、この作品は確信犯的にベタな展開を狙っているのでしょう。しかし挿入される数々のエピソードには、全てメッセージや当時の風刺が入っているのは、丁寧で知的な演出だと思いました。なので本当に上記二つの疑問が惜しい!

ラストのオバサンたちのサニーをBGMに踊る姿は、とにかく号泣します。オバサンだって踊っていいのよ。自分の人生の主役は自分なんだから。葬儀の前の、ナミが出張の夫を空港まで出迎えるシーンが好きです。夫を労い娘に父親を立てる事を教えています。今まで自信のなかったナミが、夫に対して引け目ではなく感謝の心を表しています。同じ事をしているようで、彼女の気持ちの中で対等になったのですね。これもチュナからの贈物だと思います。昔を懐かしむのは、今を元気に生きるため。そうでなきゃ。オバサンだって大志を抱け。オジサンもね。

06月14日(木)
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