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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「わが母の記」
母の死を看取った志賀子に、心からの労いの言葉をかける伊上。万感を胸に抱き号泣する志賀子。私が一番泣いのは、伊上と母ではなく、志賀子の涙でした。この充実感と寂しさの入り交じった感情は、親の介護をやり通した子供がだけが抱ける、神様からのプレゼントなのだと思います。子供やその家族全員が長く母の介護に当たり、確執も恩讐も越えて、心置きなく見送れると言う、素晴らしい親子の終焉でした。

人生の晩年、親が子供に手を焼かせるのは、それは子供孝行なのではないか?と思うのです。例えばあっけなく三日くらいで親が死ぬとします。この世で別れる心構えもなく親の死を迎えたら、子供の心には、いつまでも「申し訳なさ」が残るのではないでしょうか?厄介だ、もう嫌だ、でも親なのだと自分を奮い立たせた日々は、のちのちの子供の人生に、確実に血となり肉となるものを残すはずです。これは私の実体験でもあります。

伊上家は人出もあり、お金もあると言う恵まれた家庭でしたが、その代わり今の時代には、介護ヘルパー、デイサービスやショートステイなどがあります。デイサービスに通うお年寄りを見ると、あそこは高齢者の保育園だなと思います。子供が小さい時、幼稚園や保育園に行くと、仕事や家事、そして息抜きが出来るので、ほっとしたものです。それを今度は子供の側が感じるのですね。正に歴史は繰り返す。大事な事は、決して親子の縁を断ち切っちゃいけないという事です。色々上手に介護サービスを使って辛さを乗り切りたいですね。

私も老後は健康に気を配り、息子たちには迷惑をかけたくないけれど、でも自分の力でどうしようもない事は、遠慮なく頼もうと思います。それが息子たちのためだから。しっかりそれを認識させてくれた作品です。

05月03日(木)
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