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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「別離」
ナデルは本当にラジエーの妊娠を知らなかったのか?ラジエーは父を拘束してどこに行っていたのか?その二点の真相が、ミステリーの如く場面を釘づけにします。派手なアクションもなく口論の場面がほとんどなのに、この緊迫感、見事だと思いました。

映画は信仰についても深く考察しています。イスラム教の人はみんな信仰心がとても厚いように感じますが、それも人によりけりだと言うのがわかります。本当に真実を告白すれば、許されるのか?現実は観る者に委ねられ、葛藤の真っただ中にいる彼らに、とても人間らしいものを感じます。この葛藤は信仰というより、私は「良心」だと思いました。しかし泥棒の濡れ衣を着せられたとき、猛然とナデルに抗議し、使用人だからと卑屈にならず、「私に敬意を払いなさい!」と胸を張ったラジエー。貧しい暮らしの中、彼女に人としての誇りを失わせなかったのは、私はやはり信仰だと思いました。

それに比べれば、ナデルの「誇り」は、何だか男性専科の誇りのような気がします。ろくでなしのホジェットといい、まだまだイラン女性は解放されてはいないのでしょう。これはどこの国もですかね?シミンがテルメーに外国での教育を望んだのは、それも理由だったかも?しかし本音を隠しての夫婦の軋轢は、娘のためのはずだったのに、今は娘は置き去りで、一番の被害者はテルメーです。やっぱりぶつかり合う時は直球でなくちゃ。「誇り」が邪魔をして、話をすり替えるて進めると、結果が不毛なのは、これもどこの国も同じです。

イラン特有の事柄を散りばめながらも、親の介護、子供の教育、夫婦の不仲、夫の失業など、どこの国の人が観ても、自分に置き換えて、深く考えながら観られる作品です。お見事でした。

04月19日(木)
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