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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「哀しき獣」
これが素顔のユンソク(左)とジョンウ(右)。一番上の画像とはだいぶ違う模様。今作では見事な化けっぷりで底辺でもがく人間=グナムと、輝く人間=ミョンをくっきり演じています。ジョンウも素晴らしい熱演を見せるのですが、今回は得体の知れないモンスター的怖さと、大陸的なユーモアを兼ね備える闇の大物っぷりが、とても魅力的だったユンソクが光っていました。とにかく死なない。でもこの男だったら、ありかもなぁと、妙に納得させられるのです。
脚本はあれもこれもと盛り込まず、もう少し的を絞る方が良かったかも。とにかく勢いで魅せたのですから、こじつけのような謎解きは必要ないと思いました。へまをしたキムの部下の扱いも雑。韓国女性の貞操観念の低下も匂わしていますが、それも不要。描きかったら、また別の機会にお願いしたかったです。
で、私が不満なのは、せっかく朝鮮族をモチーフにしたのだから、もっと掘り下げて欲しかったです。監督は朝鮮族の事についてほとんど知らずに成人し、何かのきっかけで知り、描いてみたいと思っていたのだとか。「チェイサー」で挿入しようとしたけど、膨大になり過ぎて止めたのだとか。
もう国籍は中国で、彼らには見た事も行った事もない韓国。それを未だに自分たち同士の公用語として使うのは、便宜以上の何か理由があるはず。または屈託や郷愁でしょうか?私も同じ立場だから、そこが知りたいのです。ターゲットがグナムを見つけ、そのみすぼらしい形から、「朝鮮族か?」と訪ねます。幾ばくかの施しをするのを、私は温情だと思いました。しかしラストを観ると、それは捨て猫に、その場限りのミルクをやるのと一緒だったのですね。彼らにとっては屈辱です。生まれ育った中国で差別され、自分のアイデンティである国では人間扱いされず。しかし行き場も居場所もないその苦悩や怒りが、イマイチ見えてこない。もしかして、したたかさが肥大してミョンになった、と言いたいのなら、それは違うと思うし、韓国本土の人間が描く朝鮮族としては、失礼だと思います。
この苦言は、ナ監督が、これから韓国映画界を背負って立つ逸材だと思うからの苦言です。幸か不幸か、韓国は題材には困りません。社会性に富んだ娯楽作の傑作を期待しています。
01月21日(土)
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