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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ハウスメイド」
昼メロかと思うあれこれがあり、ヘラと母の手で流産させられたウニ。愚鈍ですが気立てが良く優しいウニは、一人で子供を育てる気であったのに。上流の男とは縁がなかったであろうウニは、最初これがきっかけで自分は這い上がれるかもと期待していましたが、結局はフンにはただの気まぐれ。娘ミナには、「どんな人でも敬意を持って接しろ。それが自分を高める」と教育する心とは裏腹、ウニを人並みに扱う気はないのです。フン、ヘラ、ヘラの母と、この家は傲慢と欺瞞の塊です。
私が絶句したのは、ヘラの母に対して「ウニの腹の子は私の子だ。私の子をどうしてお義母さんが勝手に流産させたのか?」と威圧的に物申した場面です。気性の激しいヘラの母でさえ、ひれ伏し謝ります。何これ?あんた浮気したあげく、妊娠までさせたんでしょ?なら嫁さんの母親に謝れよ。韓国の男尊女卑と階級社会の尊大さ傲慢さが、ここに極まれりと言う描写です。
ラストに不満が多いみたいですね。元作では家政婦は子供を殺して放火するのかな?子供は殺したはずです(これがアン・ソンギの役)。この作品では一人だけ自分に優しかったミナに「私の事を忘れないで」と最後の言葉を残し、ウニは焼身自殺。忌まわしい記憶の家を捨て、フン一家はどうも欧米のどこかで暮らしているようです。
さすがに今の時代、子殺しは描写できないでしょう。フンやヘラを惨殺するのも、子供が残されてしまう。そういう残酷な女性には、ウニは描かれていませんでした。「ビーデビル」のボンナムが、島民を根こそぎ殺戮したのは、我が子が亡くなったからです。また若いメイドを雇ったフンは、きっと同じ事を繰り返すでしょう。そしてアルコール依存症気味になったようなヘラと、修羅場を繰り返すことでしょう。
ナミは祖母がウニを流産させようとした場面を目撃しています。そしてウニの言葉。その意味がやがてわかる日が来るでしょう。フンは妻の出産のため、出張先から帰国するほど、何より子供が大事なのです。血にこだわる上流社会の一端です。けれど真実を理解したナミは、両親を嫌い蔑むでしょう。自分の人生で欲しい物は全て手に入れてきたフンは、娘の敬意は絶対手に入らないのです。韓国人の、そして上流社会の父親として、これほどの屈辱はありません。ウニは自らの命を賢いナミに託して、復讐しようとしたのじゃないでしょうか?それ以外、圧倒的に地位が上の彼らに、復讐する手立てがなかったのでしょう。
冒頭飛び降り自殺する女性が出てきます。ウニのように社会からはみ出し、絶望した人だったのだと、ラストに理解しました。「ビーデビル」といい、今の世の中でこのような作品が作られることに、韓国社会で脈々と続く悪しき常識に、暗澹たる気持ちになります。問題は男性側だけではなく、女性にも充分ありますよと言う気持ちが、ヘラの造形でしょう。昔ながらの夫に尽くし子を育てると言う「女の幸せ」を、私は否定しません。これも立派な幸せの在り方です。でも「金持ちの男と結婚して贅沢に暮らす」を目指す女性は、決して幸せではないと思います。
これを古臭いと言うなかれ。韓国だけじゃなく日本の女性も最近じゃ、仕事より専業主婦になりたい若い子が多いとか。大不況の折、仕事で苦労するのがイヤと言う本音も目にします。もうホントに嘆かわしいわ。結婚だって苦労の連続だよ?玉の輿願望の女性に、是非観ていただきたい作品です。
09月15日(木)
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