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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「デンデラ」
しかし動けない者、穏健派のマサリたちを「意気地なし」と呼びますが、決して差別はしない。食べ物も平等、村八分などなく対等に尊重します。如何にメイが優秀な指導者であるかと共に、ここにも下界で虐げられ続けた彼女たちの辛さを痛感します。

しかし彼女たちの行手を阻むのが、自然はともかく「子供の産める若い女」というのが皮肉。這いつくばって、これでもかと食らいつく「女」に敬意を表しながらも、「まだ子供を産む気か?」と、嫉妬と怒りを見せるカユ。その辺にも昔は、女の値打ちは子供の産める年齢までだったんだなぁと感じます。

長年この世界で活躍している人ばっかりなので、主要キャスト全てに持ち場を与え、それぞれがきちんと役割を果たしています。一番良かったのは草笛光子。やっと衣食住足りてホッとしたとき、水面に映る汚い自分に驚き、魚の骨で髪を梳こうにも、ゴワゴワで出来ません。この時の涙は圧巻です。老婆である前に女、その前に人間なのです。最低限人としての尊厳が守れる集落を作ったメイに、感動すら覚えました。

途中で展開が「グリズリー」になったりで、何が敵かわからなくなって、ちと散漫な印象はまぬがれません。聖職者のようなマサリの存在も、メイのように回想シーンを使うなどすれば、彼女の言葉にも説得力が出て、よりくっきり存在が浮かぶと思います。

しかしそれを吹っ飛ばすほどのパワフルな婆様たちの大奮闘に、予備軍の私は大いに元気を貰いました。今はこの作品で描かれたような虐待や、ひどい男女差別はありません。でも家庭に入れば子供の進級・進学、夫の転職・仕事の変化で、女は寝る時間から起きる時間、果てはパート先の職場まで、ライフスタイルをくるくる変えて、家族の人数分支えているのです。家族からは口では「ありがとう」と言われるけど、実際はわかってないんだよなぁ。当たり前だと思われている。私は夫と子供にわからせるのに、28年かかりました。そういう生活に不満を持っているあなた!あなたのための映画ですよ。変化も進化もする大女優たちに見習って、小娘のワタクシたちも、まだまだ進化していきましょう。

06月26日(日)
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