ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[927080hit]

■「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」
閉塞した人生を壊す=打破した人だと、二人が思いこんでいたケンタの兄カズは、彼らが思っていた人間ではありませんでした。そのことを理解した時、ケンタが「兄ちゃん・・・」と心の底から絞り出すように語りかけた姿が、今も目に焼きつきます。ケンタには薄々分かっていた事が、目の前で露見したのだと思います。

親がいない、人生を導いてくれる人がいない、帰る場所がない。なのに誰にも助けを求めない。その哀しさ辛さが画面から充満しているのに、その事に彼らは気付いていないのが、一層哀しいかったです。

主役三人とも好演でしたが、特に目を引いたのが安藤サクラ。ロークラスを匂わせる品のない衣装、一種白痴めいた演技を見せながら、本当に無垢さを感じさせます。これは大物でしょう。美人とは言えませんが、それがどんな役にも対応できる、彼女の武器になると思います。その他はカズ役の宮崎将。刑務所での演技は、頭にも心にも何も持たない哀しさは、もう人間では無いのじゃないか?と絶望させるような演技で、圧巻でした。妹(宮崎あおい)ばかり持て囃されますが、もっと表に出て来て良い俳優だと思います。

世界に二人きりの彼ら。「三人なら生きられる」というコピーは、こういう意味だったのか。痛切なラスト。バカでもブスでも、カヨちゃんには夢も希望も愛もありました。彼らのような若者は、今後いっぱい増えるのでしょう。若者だけでは無く、いい歳の大人だって、彼らのように孤独を孤独ともわからず、老いて行くだけの人が増えているような気がします。私は何をすればいいのかな?あれもこれも、人生足りない事だらけの私だけど、愛もあれば孤独もないです。でも人生足りないからこそ、彼らの痛みもわかるのです。私的には傑作の部類に入る作品だと思いました。

06月27日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る