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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「息もできない」
本当に辛い悩み事は、誰にも言えないものです。人に相談出来る悩み事は、まだ軽いのだと私は思います。排他的になる二人の気持ちが、私には痛いほどわかるのです・お互い交流を重ねても、自分たちの境遇は決して話さない二人。作り話の家族の話をするヨニに、「それなりの家の子だと思っていたよ」と言うサンフンですが、それは彼の思いやりでしょう。チンピラと街をほっつき歩き酒を飲み、夜中に会いたいと言えば出てくる少女が、堅い家の娘だとは誰も思いません。愛でもなく友情でもなく、そんな生易しい感情ではない、突き抜けた二人の魂がぴったり重なった漢江での逢瀬。むせびなく二人の姿に私は号泣。美男美女には遠い男女がただ泣く、そんなシーンがこんなに美しいなんて。
サンフンとヨニ。次第に距離が近くなり、次の段階に二人の交流が深まる気配を見せた頃、サンフンは今までしてきたことの、落とし前をつけられます。それはまるで若い頃の自分に復讐されたが如くです。
明るい兆しを見せながら、暴力の連鎖は断ち切れないのかと、ヨニを絶望させるようなラスト。でも私は、サンフンと交流することで強く生まれ変わったヨニを信じたいです。彼女には出来る事があるはずだから。自分の境遇を受け入れる事、それを学んだのが、サンフンとの逢瀬でした。
インディーズ界の大物俳優だそうなヤン・イクチュンは、私財を投げ打ってこの作品を作ったそうです。彼自身家族の問題に長年悩まされていたそうで、その思いをこの作品にぶつけたそう。各方面でこの作品は絶賛されたそうで、ヤン監督、自分の貴重な体験が映画人として生かされて良かったですね。私も複雑な家庭に育ち、結婚するまで様々な葛藤を抱えて生きてきました。その生い立ちが、私の映画の感想には生きています。多くの方に私の感想を好んでいただけるのは、あの両親あってこそだと、皮肉ではなく本心から思っています。この作品を観て、ヤン監督が私と同じ気持ちであることを、心から信じています。
04月16日(金)
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