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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「牛の鈴音」
段々弱ってくる牛の代わりに、新しく若い牛を買ったのですが、この牛がお婆さん曰く「若いくせに怠け者だ」そうで、働いているシーンが全然映りません。そのくせ角で老いた牛を威嚇し、えさを横取りしようとします。若いと言うだけで傲慢なその姿は、人間そのもの。画面はお爺さんの汚れた爪、白髪交じりの汚い鼻の穴まで映し、決して老いを美化しません。年を取ると言う事は、身綺麗とは反対の薄汚くなっていくものですよ、と言いたげです。
作り手は執拗にその小汚い姿を映しながら、自然に老いることを肯定しているような気がしました。
売られそうな時や今際の際、牛の流す涙がとても心に染みました。「畜生だが、わしには人間以上」の牛が畜生でなくなった時、畜生の証だった鈴が外された時、私から思いがけないくらいの涙が溢れました。寂しくもあり哀しくもあり、そして安堵もし。ほんの一時間半足らず、この老夫婦と時間を重ねた私にも、牛は人間並みの存在になっていたようです。
公開時韓国では、その年一番ヒットした作品だったとか。韓国的儒教の考えが薄らぎ始めているらしい今の韓国。その反動のようなものが、観客動員に繋がったのかも知れませんね。
01月15日(金)
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