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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「サマーウォーズ」
「ご飯はみんなで食べる事。家族は一人にしないこと。お金は残っちゃいないが、私はみんな囲まれたお陰で、幸せな人生だ。」栄の言葉です。健二の言葉と繋がります。何度も何度も書いていますが、これは私が27年の主婦生活で、正に実践してきたことでもあります。出来るだけ手作りの食事を作り、お腹を空かせない。決して家族を個食にはしないこと。夫や子供達が塾やクラブや仕事で遅くなる時も、食べずとも必ず傍で話をしながら、食卓をいっしょに囲みました。家族が家に帰る時間には帰宅し、出来るだけ「お帰り」と言って迎えること。もちろん仕事やどうしてもという時は、パスしましたが、家族の誰かが家にいるとき、必ず私もいるようにしたものです。
言いかえれば、私は「これしか」していません。仕事で疲れてストレスがたまっているのに、休みも家庭・家庭・家庭。でも自分のストレスより、家族の誰かが寂しい思いをしないか、その方が気がかりなのです。多くの主婦が私と同じ思いで生きているはずです。
しかし雑誌などを読むと、現代の主婦はあれもこれも我慢せず、したいことは謳歌してストレスを溜めない方が、家族も幸せなんだとか。私の誤読かも知れませんが、本当にそうなのかな?
自分のために妻が母親が、常に気を配っていてくれる。いつも家族の息遣いが感じられる空間。そういう家庭に育った子は、仮に道を踏み外しそうになった時、自分が曲れば、親が悲しむ。家族に迷惑がかかる。そう思い踏みとどまるんじゃないでしょうか?そういう思いは、栄婆ちゃんの言葉通りの暮らしをすれば、肌に髪に沁み込んでいくものじゃないかと、私は思います。
一見古いしきたりと価値観で統一されているような陣内家ですが、孫やひ孫は、外孫内孫関係無く、大人は皆で愛情を注ぎます。バツイチでも大手を振って参加できる、風通しの良い関係です。そして日蔭者のはずの侘助を決して忘れない心。これは当主である栄が、良き古い血は残し、新しい良き血はどんどん取り入れる、開放的で大陸的な思考の人であることからでしょう。ねっ、古くて新しいでしょう?
「古くて新しい」は、OZでの格闘ゲームを「スポーツだと」と言う、元いじめられっ子のカズマと、カズマと又いとこで、高校野球で頑張る了平の姿を交互に移すことで表現されています。どちらが良い・正しいというのではなく、両方肯定しているように、私は感じました。そしてカズマを強い男にするため協力したのが、祖父である万作というのが、とっても良いです。父親が仕事で忙しいなら、他の身内が代わって指南したって、全然OKですよね。ただの祖父と孫の微笑ましい交流だけではなく、忙しい父親を否定しない様子も、好感が持てました。
そして決戦のゲーム。夏希を軸として始まるゲームの壮大さは圧巻です。いやあのゲームで、あんな迫力あるシーンが作れるなんて、思いませんでした。そして一人はみんなのために、みんなは一人のために一致団結する様子の盛り上げ方は、半端無い感動を呼びます。それがべらぼうな強さを誇る人工知能にはない、人間らしい心というものです。人間とは得てして予測不能な力を発揮するものですから。
こんな地球規模の危機に、どうして政府は動かないのかしら?とも、ちと感じましたが、人が初めて接する社会は家庭です。その家庭で社会を表現したんだと、納得しています。
価値観が様々になり、それが認められつつある現代社会ですが、観客に熱狂的に受け入れられている様子は、やはり家族の強い絆とは、未来永劫普遍的な価値観なのでしょう。しかし古いだけじゃだめなんだぞと、新しい価値観も認めている所に、観客は魅かれるのでしょう。それが成長や進歩だということですね。
全部観た訳じゃないけれど、この夏一番のお薦め作です。いっぱい泣いて笑って、元気をもらって来て下さい。
08月14日(金)
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