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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「扉をたたく人」
オスカーノミニーのジェンキンスが素晴らしいかったです。監督は彼を念頭に置いて脚本を書いたそうですが、それに応える好演で、ジャンベを習ってからは若々しさを取り戻し、無邪気なくらいな熱中ぶりです。前半の寂しげで偏屈は様子からは一転、顔まで若々しくハンサムに見えてきました。タレクの母親役のヒアム・アッバスの凛とした美しさも印象的です。年齢より深い皺は、彼女の人生の風雪というより、生きて来た年輪を感じさせ、エレガントさと知性を感じさせました。ジャンベのリズムが渦巻く作品中、彼女がかける亡き妻のクラシックCDは、ウォルターに妻を寂しく忍ばせるのではなく、新たな感謝の気持ちを呼び起こしたことだと思います。スレイマン&グリラのカップルも、気持ちの良い恋人同士でした。
ラスト、現実の無理解に怒りを込めて、地下鉄でジャンベを一心にたたくウォルター。その姿は、初老の人の嘆きではなく、青年の社会に対する怒りのようでした。ふとした出来事から、ハートウォーミングな展開になり、その後苦い現実で着地する作品です。しかし辛さも怒りも充分に感じるのに、それ以上の希望や勇気を感じさせる、若々しく、かつ成熟した作品でした。
07月28日(火)
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