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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「純喫茶磯辺」
それはどこから来るかというと、自分の居場所があるかないか、ではないでしょうか?咲子には父という居場所があるのに対し、素子には無条件で自分を受け入れてくれる場所がないのではないかと感じました。それがNOと言える咲子、言えない素子の違いです。その心細さが、来るもの拒まずの自尊心のない素子を作ったんだと感じました。麻生久美子は意外なほどメイド服が似合って、とっても可愛いかったです。清楚な雰囲気のいつもとは違う役柄ですが、地に品があるのが功を奏して、バカっぽい素子の苦悩を、しんみりとこちらに伝えてくれました。
そういえば、裕次郎は咲子を路頭に迷わすようなことはありませんでした。父親はこれが一番大事だと私は思います。咲子の母の話では、離婚の際も、裕次郎はどうしても咲子を手放そうとはしなかったとか。素子と結婚を夢見ても、咲子の存在は忘れない裕次郎。さっさと再婚してしまう母。グータラして娘に甘えてばかりの裕次郎ですが、そこかしこに、咲子への愛情がいっぱいだと思います。このことを、きちんと娘に伝えられる元妻も、素晴らしいと思いました。
ラストは前半からは信じられない寂寥感と哀愁が漂い、とっても気に入りました。ユルユルのコメディ仕立てで、ダメ親父としっかり者の娘の愛情物語を描きながら、人生なんて欠落したものがいっぱいあってもいいんだよ、と優しく背中をさすられた気分になった、鑑賞後でした。
07月16日(水)
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