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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ジェシー・ジェームズの暗殺」
ジェシーもロバートも同じように仲間を売り(と私が受け取った場面あり)、背後から仲間を撃っています。しかしジェシーは死して尚名声を高め、ロバートは卑怯者の謗りを世間から受けます。私のような年齢なら、人には「分相応」というものがあると知っています。しかし若いロバートにはそれがわからない。ジェシーを殺すことで、自分の憧れていた人を超え、名声を得られると思っていたのでしょう。自分が若い頃よりはちょっぴりましな人間になっていると実感する時には、人は老いているものです。若げの哀しさというものを、感じさせます。

ブラピはその美貌が災いして、近年これといった強い印象の役がなかったように思いますが、中年という俳優の分岐点に来て巡り合ったこの作品は、必ずや彼の代表作になると思います。難しい役だったと思いますが、彼の好演のおかげで、ジェシー・ジェームズが、段違いの偶像だったという事に、ものすごく説得力がありました。昔から思っていたんですが、彼は自分の美貌には執着ないように感じるんですが。

オスカーにノミニーされているアフレックも、凡人の哀しみを小動物のようにチマチマ演じて、これがロバートの造形にドンピシャの好演でした。「今日は良くない日だから、気をつけるように」との言葉に、「昔から幸せだったことがないので、気にしない」との台詞には、胸を締め付けられました。向上心ではなく功名心を心に持った若者を、繊細に演じていてとても良かったです。

サム・ロックウェル、サム・シェパードなど、その他の主要キャストも、有名無名の人全て、とても良かったです。私が特に秀逸だと思ったキャスティングは、ジェシーの妻役のメアリー・ルイーズ・パーカーと、ロバート兄弟の姉役アリソン・エリオット。ともに地味ながら主役も張れる実力派ですが、作品の雰囲気をよく理解して、控えめな演技で男の世界の話を支えていました。

広大なロケーションはとても見応えがありました。若葉が芽吹いていたり、豪雨だったり、雪深さが寒々として気分が沈んだり、作品の内容と同時進行で、雄弁に語っていました。スクリーンで観る価値充分の作品なので、どうぞ機会があれば劇場でご覧になることをお勧めします。

01月26日(土)
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