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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「アフター・ウェディング」
その実夫は、妻には母のような振る舞って欲しいと願うのですね。妻も知らず知らずにその役割を担ってしまう。もちろん例外もありますが、そういう心が、若い時は夫優位、中年以降は妻が優位の関係を築いてしまうので、いつまでたっても本当の意味での対等なパートナーとしての関係が築けないのだなぁと、痛感しました。

私がそんな感慨を持っている時に、スクリーンは取り乱してヘレネにすがるヨルゲンを映します。演じるラッセゴードの渾身の演技もあり、彼が長きに秘密を明かさなかったのも、これも夫や父親としての立派な美学だなぁと、違和感も疑問も吹き飛んでしまいました。

出演者は皆がとても印象深いです。ラッセゴードは、札びらで人の頬を叩くような、高慢さを見せながら、徐々に家族に対する愛や自らの孤独を滲ます姿に、とても心打たれました。ヨルゲンがヤコブに望んだことこそ、お金では得られない愛を、彼が知っている証だと思います。ラッセゴードは、スウェーデンの人で、「太陽の誘い」という作品で、40過ぎの文盲で童貞の無垢な農夫を好演していた人です。この作品もとっても情感豊かな秀作なので、未見の方は是非どうぞ。

大好きなマッツ・ミケルセンは、今回私の好きな「優柔不断で誠実なインテリ男」の役で、華やかな場に気後れと疎外感を感じる場面、自分の怒りを素直に表現する場面や葛藤など、私的にとても堪能出来ました。私はあまり俳優で作品を観ることはないのですが、彼の次回作は絶対観ようと思っています。

今回も頭から尻尾まで、ビア監督を味わい尽くしました。私は「ある愛の風景」の方が好きですが、この作品もとても気に入りました。次の公開作はハリウッド作品で今春公開だそう。とても楽しみです。

01月10日(木)
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