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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「グッド・シェパード」
再会したローラが、もし二人が結ばれていたら、穏やかな日々を送っていただろうと語ります。それはエドワードとて同じでしょう。しかし彼がローラを選ばなかったのは、マーガレットが妊娠していただけではなく、ローラが聾唖だということも躊躇したのでしょう。エリートの階段を順調に上る自分が、ローラでいいのかと。敏感に感じていたローラは、何度も自分を卑下していました。それなりの地位に昇りつめた今、ローラの語る言葉は、彼の胸に突き刺さったはずです。

ローラからエドワードを奪った形になったマーガレットですが、最初若くて美しく、親に財力もある女性は傲慢だなと思いましたが、彼は兄からエドワードの話をいつも聞いており、その時から恋していたのでしょうね。やっと会えた彼は、一目でマーガレットにとって最愛の人になったのでしょう。その人の子を産み妻となったのに、こんな残酷な日々が待ち受けているとはと、私はマーガレットに痛く同情しました。

自分なりに良き夫、父であろうと努力するエドワード。恩師の行く末に対しての葛藤や、妻への裏切りの際のけじめの付け方など、本来の彼は誠実な男性なのだと感じさせます。それが一たび仕事となると、信じられないような冷酷さを発揮するのです。最愛の人にとって、自分が一番信頼されている=安心できる存在だと思っていたはずのエドワード。そうではないと思い知らされても、父からの遺言を読んでも、エドワードは変わりなく仕事を続けます。国に忠誠を尽くすとは、どういうことなのだろうと、考え込んでしまいます。

ソ連の諜報部員が、「ソ連はアメリカに対抗できるような備えのある大国ではない。ソ連に大国でいて欲しいのは、アメリカなのではないか?」と、皮肉めいて語るのが深く印象に残りました。敵を作らねば、上下関係を作らねば、生きていけないアメリカ。その様子は今にも受け継がれています。CIAという特殊な環境に生きるアメリカ人を描きながら、実はすべてのアメリカ人に共通する心の病巣を描いていたのかも知れないなと、今感じています。

11月02日(金)
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