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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ヘアスプレー」
トレーシーを演じるニッキー・ブロンスキーが素晴らしい!とにかくキュートなのです。画像を観ておわかりのように、かなりのおデブちゃんなのですが、ハリがあって声量のある歌声、キレもあるけど、ゴムまりが跳ねるようなユーモアを感じさせるダンスが、これまたとっても愛らしいです。何故こんなに可愛いのかと考えたのですが、この可愛さは赤ちゃんに通じるのですね。丸々太ってボンレスハムみたいな赤ちゃんを観て、「この子太り過ぎでブサイクね」と思う人は、よっぽど意地悪な人でしょう。純粋に黒人たちの踊りをカッコ良いと憧れ、教えをこう素直さ。仲良くなった彼らの苦境を知るや、何とか力になりたいと奮闘するある意味分別の無さは、世の中の構図を知らないから出来る、若さだけの特権でしょう。その瑞々しさや純粋さには、大人をも目覚めさせる力があるんですから、これも赤ちゃんと同じですよね。

その他登場人物が全てよく描きこまれています。演じる俳優もベテラン揃い。腕もあって華もある俳優ばかり集めているので、普通これくらい集まればギトギトするのですが、目立って良いシーン、相手の個性を引き立てなければいけないシーン、それぞれがわかってお芝居しているので、とってもアンサンブルが良いです。ファイファーは意地悪アンバーを演じて嫌らしさ満開ながら、50歳前にしてその美貌の凄みに感嘆。上に書いたような女の哀しさもきちんと感じさせるなど、絶妙の敵役で、とってもチャーミングでした。ウォーケンも超鈍感で変人ながら、とっても善人で愛妻家の夫を演じて出色でした。クィーン・ラティファも、黒人たちのビックママ的存在のメイベルを、包容力があって求心力抜群の存在感で表現し、それをご自慢の歌声でさらに強化して、お見事でした。嬉しかったのはジェームズ・マースデン!いっつもいっつも優等生でいい人なのに、ふられたり死んでしまったりの役ばっかりで、明るい彼は観たことがありませんでした。あぁしかし、この作品では弾けるような明るさで、スーツを着て髪型もびしっと決めて、60年代の品行方正で由緒正しきスターっぷりを見せてくれます。未来は差別がなくなる世界だと信じて、押してもだめなら引いてみな、的な柔軟な手法で黒人たちを応援する姿は、向こう見ずではない、大人の対応の仕方だなと勉強になりました。
その他若手の主要人物たちも、若々しくて健闘していましたが、如何せんベテラン陣が素晴らしくて、ちょっと影が薄かったですが、それはキャリアの差なので、致し方ないことでしょう。

そしてそして、画像のトラボルタ!元作のエドナが、伝説のドラッグクィーン、ディバインであったための起用かと思いましたが、舞台のミュージカル化に際してのウォータースの注文も、「エドナ役は絶対男性で」だったとか。

トラボルタと言えば、私が青春時代熱狂した「サタデーナイト・フィーバー」や「グリース」などでも、ダンスの腕はお墨付き。こんなファットスーツ着て踊れるのか?と思っていたんですが、弘法筆を選ばず、じゃない役者役を選ばずで、全然OKなステップでした。なんでもエドナになるための特殊メイクは、毎日6時間かかったそうですが、その甲斐あって、見事な母親っぷりです。その超ふとっちょな体からは、暑苦しくもありがたい母性が充満です。仕事が忙しくなかなか夫がかまってくれなくても、「男の人は家庭よりお仕事が大切なのよ」と、60年代は日米とも良妻賢母のおかげで社会が成り立っていたのだなぁと、つくづく感じました。結婚して太ってしまった自分を恥じて外へは出ません。実は私も結婚前から十数キロ太ってしまって、夫からは詐欺師呼ばわりされて幾歳月、昔は傷ついたもんですが、最近では「あんたが三人も子供産ますから悪いねん」と開き直る有りさまで、エドナの爪の垢でも煎じて飲まなくてはと、深く反省(嘘)。


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10月21日(日)
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