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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「レッスン!」
この子たちは、本当は今のままじゃダメなんだと思っています。素直に居残り組に残っているのは、それが卒業の条件だから。ほとんどの子は万引きやかっぱらいくらいで、そんなにひどいか?と思う子ばかりですが、本当に更生し難い子たちは、とっくに学校を辞めているんでしょうね。なので簡単にデュレインの手練手管にはまってしまう可愛さも、納得でした。監督のリズ・フリードランダーは、女性らしい細やかな表現で、デュレインに負けず劣らず子供たちを愛して撮っていて、とても好感が持てました。

ハイティーンが主役なので、あちこち恋いのさや当てがあります。格差恋あり、甘酸っぱい恋あり、三角関係あり、ロミオとジュリエット、いやトニーとマリア(「ウェストサイド物語」)かな?の恋あり。そのどれもが微笑ましくみずみずしいです。こういうのを観ると、やっぱり若いっていいなぁ。

今回バンちゃんは情熱の全てはダンスに捧げているので、フェロモンは画像のタンゴシーンのみで、他は封印。ラテンの名残を優雅に女性をエスコートする場面に残し、若い生徒たちを引き立てる受けの演技です。まぁバンちゃんたら、頭も良かったのね!(←監督と脚本のおかげ)でも本来のバンデラスの魅力は、こういう誠実で真面目な一面を持つ人だと、観る人に感じさせるところだと思うんです、私は。だからマドンナとか、現嫁のメラニー・グリフィスとかダリル・ハンナとか、百戦錬磨の女優たちがモーションかけるのよね。きちんと仕事をこなし、一見派手だが根は真面目で家庭的、おまけにエッチも強そうなんて、夫としては申し分なしではございませんか。

校長は、「この子たちは明日の糧を得るのに精いっぱいなのよ。ダンスを教えても何にもならないわ」と、当初語ります。黒人で女性でもある校長の、それは生きていきた哲学かも知れません。しかし母親は自宅で売春、その隣で幼い弟たちの面倒を看るといういう、劣悪な環境にいるラレッタ(ヤヤ・ダコスタ)が、屈辱的な行為に傷ついて、それを癒しに来た場所は、ダンスのレッスンをする居残り部屋でした。そこで無心に踊り平静な心を取り戻そうとするラレッタ。人はパンのみでは干からびてしまうのですね。どんな環境でも、心を潤わすバラは必要なのです。

情操を養うのが大切なのは、大人もいっしょ。劇場には、もしかしたら社交ダンスを習っていらっしゃるのでしょうか、年配のご婦人がいっぱい。鑑賞後くちぐちに、「本当に観て良かったわね」と仰る姿は、生徒たちと同じくらい輝いていました。この作品を観て良かったと言える感受性を、私も死ぬまで持ち続けていられたら嬉しいです。

07月27日(金)
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