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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「あるスキャンダルの覚え書き」
シーバの秘密をバーバラが知ってからの展開は、ホラーめいてきます。どんどんシーバの家庭に入り込んで疫病神のようになっていくバーバラ。明るみに出るバーバラの過去から、彼女は反省も学習も出来なかったようです。バーバラしか頼るところがなくなったシーバは、バーバラの計算通り。

シーバの秘密が露見するきっかけは、ちょっと疑問が残ります。あのような実も蓋もないことを、親しくもない相手に頼みにくるでしょうか?この辺は少し苦しい気がします。もうひとつ気になったのは、シーバの母親。「あの子は今まで美しさだけでやってきた。才能も実力もない」と断罪するとは。これが障害児を抱え、結婚のいきさつからも常に良き主婦でいなければと、一生懸命頑張ってきたわが娘に対しての評価でしょうか?不道徳な行いをしたシーバ以上に母親として失格だと思います。シーバが年長のバーバラに感じた親しみは、満たされない母との関係から起因していたと思います。シーバの孤独は、母親との関係から遡ると感じました。

オスカー受賞者の主演の二人はさすがの好演です。デンチはスパイの上司かから女王陛下までなんでもこなす人ですが、観客からは嫌悪されなければ話が成り立たないバーバラを演じて絶妙。痛々しさも感じさせながら気持ち悪さと腹立たしさが勝つ演技です。ブランシェットは、私は強く知的な印象があったのですが、初登場シーンから柔らかく危うげな色香がいっぱい。今までに観たことのない彼女でしたが、私の天敵女を演じて理解も共感もさせるのですから、やっぱりすごい!ビル・ナイは、くたびれた初老の姿の奥に、度量の大きさを滲ませる夫で素敵でした。

ラストはもう一捻り欲しかったところ。ブラックな落ちより、私は救われるか、これまでの代償に砂を噛むような両極端の落ちが似合ったと思います。バーバラはシーバに似合わない家族から救ってやったと言い放ち、リチャードは運命の人ではないと言います。私は違う思う。連れ合いに縁のあるなしはあっても、運命の人などいないのです。運命の人であるかは、結婚してからの努力次第。かつてはパンクな気の強い化粧が似合ったシーバですが、今の彼女には全然似合わず、素顔を生かす優しいメイクが似合うのが物語っていました。人の運命は良くも悪くも変わるものです。

06月14日(木)
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