ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[927768hit]
■「狼少女」(DVD鑑賞)
小4というのは、女子の方は早い子は体の変化が現れ始め、それと同時に心も思春期に突入して行きますが、男子の方はまだまだガキンチョ。そして大人びて賢くなってもいくけれど陰湿にもなる女子対し、男子はあくまでおバカで健康的。その男女アンバランスな小学生の日常が、放課後の遊び、授業、寄り道の様子などで存分に描かれていて、懐かしさが込み上げます。
上に書いた胸が膨らみ始めた秀子の件は、秀子初登場シーンから私は彼女の胸の膨らみが気になっていたので、きちんと幼い性への関心と戸惑いが描かれていたのも、良かったです
秀子に肩入れする留美子は、彼女を守ろうと自分が気になる明も誘います。しかしそのことで明と秀子が噂になると、それぞれが自分の心をもてあまし、微妙に三人の関係に影を差すのが、大人の私が観るととても微笑ましい。好意と恋の間のような描き方に好感が持てます。
留美子には秘密がありました。観客にはそれがどんな秘密か、伏線が張ってあるのでだいたい予想がつきますが、彼女の賢さ、優しさ、強さがこの秘密にあると思うと、本当に切ない。「私は秀子ちゃんを可哀想だとは思ったことはありません。秀子ちゃんが大好きなだけです」と言う手紙に込められた、ありったけの留美子の想いに私は号泣。「カポーティ」で、カポーティは、自分とペリーを重ねて、自分は玄関から家を出て、ペリーは裏から出て行った人間だと表現しました。留美子も秀子と自分を重ねたのでしょう。秀子が玄関、自分は裏からと。
出演者はみんな良かった!子供達はみんな伸び伸びと演じて、とても好感が持てます。特に留美子役の大野真緒はきりっとした整った顔立ちから表の留美子を表現しながら、彼女の心の内の陰りもきちんと表現出来ていて、一番印象に残りました。田口トモロヲが留美子に寄せる優しさと情が、私には救いでした。留美子の生命力の強さを、陰で支える人のように感じました。先生役の馬渕英里香も、子供達を引き立てる演技で好感が持てました。
人というのは何かを背負って生まれてくるものでしょう。それは留美子だけではなく、秀子だってそう。明の家庭は決して豊かではないけれど、二人に出会ったことで自分の境遇に感謝し、それぞれの人の痛みを知ったのではないかと思います。それは明だけではなく、ガキ大将たちや他の子供たちもそうだと思います。そう信じさせてくれる平凡ですが素晴らしいラストの光景に、私は号泣。学校とは勉強や社会に出るための知識を身につけるだけではなく、豊かな心も成長させる場でもあって欲しいと、昭和の学校の風景から切に感じました。
04月29日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る