ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[928096hit]
■「ドリームガールズ」
ディーナたちはダイアナ・ロス&シュープリームス、ジミーはジェームズ・ブラウン、カーティスにも伝説の大物プロモーターのモデルがいます。しかしあくまでモデル。そして複数のショービズの世界に生きる黒人を浮き彫りにすることで、単一に黒人だからと言い切れない、様々な生き方があるのだと、目の当たりにさせることが出来たのです。そこが「レイ」にあった、「レイ・チャールズの苦悩=才能ある全ての黒人歌手の苦悩」という錯覚に陥らせません。
頑なに自分たちの黒人音楽を守ろうとするマーティやエフィ。古い自分も守りきれず新たな自分も探せず、人気者から凋落していくジミー。時代に融合し、新しい自分を見出しながらも、黒人としての「ソウル」を保つことに拘るソングライターのC・C。自分自身の新たな飛躍を願うディーナ。そして一見所属するタレントは商品、ヒットするため、金になることなら人の心を踏みにじっても厭わぬように描かれているカーティス。成功のために手段を選ばぬ彼は、いつしか白人と同じようになってしまい、黒人の「ソウル」を見失ってしまいます。しかし誰よりも白人の音楽シーンに、ブラックミュージックが席巻することを願っていたはずのカーティス。それが形を変え、ディーナ主演で「クレオパトラ」を撮る事に固執したのではないでしょうか?伝説の世界一美しい女性を、黒人女性が演じるということに。
劇中よく出て来る「ブラザー」「ファミリー」の言葉。自分が黒人であるという「ソウル」を見失ったカーティスが、「ファミリー」というタイトルの歌の流れる中、幼い少女によって自分の「ソウル」に気づく場面は、自分たちの血を大切にする黒人らしかったです。
最初ジェニファーの歌を聞いた時、上手いなぁとは思ったけど、そんなにすごいか?というのが第一印象でした。しかしお話が進むに連れ、彼女の再起を賭けた場面での歌声に私の目からは自然に涙が。そしてラスト近く、ビヨンセが切々とレコーディングで熱唱する場面でも、私は泣きました。それは声量があるとか、技巧的にどうのこうのではなく、二人とも心で歌っていたからではないでしょうか?演技ではなく、歌のみで私は二人に感動したわけ。
初出演作で物怖じしないジェニファーも素敵でしたが、私は賞を上げるなら、現在のアメリカ音楽シーンのディーパでありながら、お飾り人形のようなディーナを演じ、その成長の様子と歌手としての彼女の素晴らしさも再確認させた、ビヨンセにあげたいです。ローレル役のアニカは、舞台で活躍しているそうで、その歌声は二人に一歩も引けをとらず、後半の控えめな存在感も好感が持てました。マーフィーは文句なし。どこか現在の彼のポジションと被るのがちょっと切ないですが、これで復活かも。ダニー・グローバーは相変わらず暖かく誠実、そして「ジャーヘッド」から私が惚れているジェイミー・フォックスは、この作品でも「いやな野郎」加減が絶妙で、惚れ直しました。
圧倒的でゴージャスなステージ場面や歌ばかりが話題にされる作品ですが、それ以上に、いかにショービズに生きる黒人達が、自分たちのアイデンティティーを守りながら、賢明に模索し葛藤しながら、その地位を確立してきたかが、きちんと浮き彫りにされた作品です。そんな黒人の尊厳を込めた作品を、白人のコンドンが撮った事に、深く重要な意味があると思います。
02月21日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る