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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「佐賀のがばいばあちゃん」
こうやって貧乏とは相容れないことも多い、心の豊かさを明広に授けたばあちゃんはしかし、人の優しさを受け入れても、人の施しは受けません。それが運動会のお弁当のエピソードと、お医者さんのエピソードの対比に現れています。人としての尊厳を守ること、一番大切なことを、ばあちゃんは明広に教えます。お金がたくさんあっても、尊厳のない人がいっぱいの世の中で、ばあちゃんに学ぶことはたくさんありました。
お話は予定調和で、格段目立ったエピソードも盛り上がりもありません。出てくる人はみんな善良で、良き友人、良き恩師、良き隣人に恵まれ、伸び伸びと心身ともに成長する明広が描かれます。ベタな内容の割にはコテコテ感はなく、サラサラとした清水のようです。私の想像ですが、多分惨めな気持ちになったり、差別されたり、明広には辛かったことも多かったと思います。でも辛かった描写は、母に会えない寂しさだけでした。私はこれでいいと思います。映画的には掘り下げが甘いでしょうが、映画で描かれる世界は、島田氏のばあちゃんや佐賀の人々への感謝がいっぱいです。彼の脳裏は、辛かったことは捨て去り、楽しい思い出ばかりに溢れているのだと思います。辛い思い出を捨て去れたのは、彼が功なり名をとげたからでしょう。
彼はその基礎が佐賀での暮らしだったとわかっているのだと思います。その万感の思いが、私の心も感激させたのです。
ばあちゃんを演じる吉行和子は、ドラマでも良き主婦を演じることが多く、家庭的な感じますが、家で家事などしたことがなく、この作品でも最初大根の洗い方がわからなかったとか。素顔は70代に入っても、年齢不詳のふんわりとした可愛さを感じる人ですが、ちゃーんと7人子育てしたがばいばあちゃんに見えるからすごい。良いキャスティングだったと思います。
繰り返し挿入される母を恋しがる姿に、画面に出てこない母の辛さも痛いほど感じた私。子供を起こしてお弁当を作って、泥だらけのクラブ着を洗濯して、またご飯を作ってその合間に怒鳴ったり笑ったり。共に暮らし世話をする以上の歓びを、母親は望んじゃいけないなと思いました。毎日の暮らしに感謝。ビデオでも良いですが、まだ上映しているなら是非劇場で大きなスクリーンで観ていただきたく思います。その方が、ばあちゃんのがばい愛情がたくさんもらえますよ。
07月07日(金)
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