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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「初恋」
後半は三億円強奪がメインになると思いきや、これからは完全なラブストーリー。確かに強奪シーンも出てきますが、少しスリリングなだけで、みすずと岸の、共有の秘め事であるためのシーンのように感じました。みすずは誰かに必要とされたことがないから、と岸の頼みを引き受けますが、本当は「岸のためになるのなら」であることは明白です。上の画像は岸の本心を確かめられず、さりとて自分の恋心を明かすことも出来ないみすずが、一枚の石を間に挟み岸の肩に寄り添っている、乙女心をとてもよく表しているシーンです。

ある程度の年齢になった女性なら、私の恋するあの人は、私のことをどう思っているのか?愛してはいないかも知れないが、嫌いではないだろう、告白して会えなくなるなら、このままがいい。そういった感情を一度は持ったことがあるでしょう。そういった本当の意味での、ピュアな恋心の描写の数々が素晴らしい。キスもなく抱擁もなく、ましてやセックスもしません。しかし手を握るだけで、肩を抱きすくめられるだけで、心臓から口が飛び出そうな、しかし幸せなみすずの心が伝わってきます。

ある事柄から、岸のみすずへの愛がわかります。このシーンはとってつけたようで、映画的には不自然です。しかし岸の愛を確認したみすずが号泣する姿に、私ももらい泣きしました。自分の恋心が報われた時、それが例えどんなに切ない状況であっても、嬉しくないはずがありません。辛く孤独な暮らしの中、捨て鉢にならず自分に正直に生きた、監督のみすずへのプレゼントだと思いたいです。

宮崎おあいは表情で見せる静かな演技がメインでしたが、大変好演だったと思います。いつまでもセーラー服が似合う瑞々しさですが、もう22歳なんですね。小出恵介は、初登場シーンから昭和の青年満開で、もうびっくり!幾ら髪型や服装を上手に真似て雰囲気を出していても、「B」にたむろする連中は昭和の若者に見えませんでしたが、小出恵介だけは別。いいところのおぼっちゃんで優等生とは、昔はあんな感じでした。

岸には三億円強奪という形で、みすずと共有する物を持つのではなく、男性として彼女を幸せにして欲しかったですが、父親を真っ当な形では越せない、弱い自分を自覚していたのでしょう。きっと彼女を守りきれなったはず。代わりに彼女に人を愛する強さを与えたのだと、ラストシーンのみすずの姿を見て思いました。ラストに「B」の仲間たちのその後を知らせますが、不遇な男性陣に比べ、女性二人(小峰麗奈扮するユカ)が、たくましく生きている姿は、その後の昭和から平成の時代を表しているんでしょうか?
お若いお嬢さん方には、みすずのような初恋を経験してほしいなぁと思います。いえ三億円強奪ではなく、即セックスに結びつかない恋です。これは少女期でなければ、絶対味わえない感情ですから。命短し恋せよ乙女、ですね。

06月23日(金)
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