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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ジャーヘッド」
サイクスは「年収10万ドルの仕事を捨ててここにいる。何故だと思う?この仕事が好きだからだ。海兵隊に居れて、毎日感謝している。」という、聞き様によっては恐ろしい言葉を吐きます。しかし年収は10万ドルでも、黒人のサイクスは生きている実感を、その仕事から得ていたのでしょうか?サイクスが生きがいを軍隊に求めていることに、根強い人種差別を感じました。
戦闘場面は少なく、油田の炎上がありますが何故か美しく感じます。これは大爆発が起こるぞ、と思うと笑ってしまう出来事で済んだり、敵だと身構えると、身内のパーティだったり、緊張と弛緩が行ったり来たりの様子も面白かったです。この作品は実際に湾岸戦争に行った人の手記が原作で、実際はそうかもなぁとリアリティを感じました。
ここからネタバレ(以降にも文章あり)
結局実質彼らが前線に出たのは四日だけ。それも敵が殺戮を行った場所を俳諧しただけでした。そして一人も殺さず一発も銃も撃たず。命令が中止になり、狙撃出来なくなったトロイが、「お願いだから撃たせてくれ!」と叫び狂うのが強く印象に残ります。トロイもまた、海兵隊で生まれ変わりたかった人間です。その証として「殺人」がしたかったのでしょう。あまり反戦は見受けられない作品でしたが、彼の狂気めいた様に、戦場にいることの怖さを感じました。そして除隊後亡くなった彼が棺の中で、みんな長髪に戻す中、一人軍隊の残骸である丸刈り姿だったのが、堪らなく哀しかったです。
ネタバレ終わり
監督のサム・メンデスはイギリス人です。(ケイト・ウィンスレットの旦那さん)。「アメリカン・ビューティ」でも、中流の家庭を通して、親子の断絶、夫婦不和、不倫、同性愛、リストラ、ドラッグなど、ブラックなユーモアとシニカルな目でアメリカの病巣を表していましたが、夫の背広を抱き泣きじゃくる妻で終わるラストは、決して突き放した目で見ていたとは思いません。この作品も同じです。戦争を題材にしながら、反戦がテーマではなく、選択肢の少ないアメリカの恵まれないの若者の苦悩を、冷静ですが暖かい目で見守っていたと思います。
演技陣はもうみんな最高!ちょっといけてる坊やくらいに思っていたギレンホールですが、ヤンチャで熱いスオフそのものの感じで、何故オスカーの主演男優賞候補にならなかったのか不思議。サースガードも、繊細で演じるのが難しいトロイを上手く表現し、出演作品全てに強い印象を残し、もうじき主演作品も観られることと思います。ジェイミー・フォックスの憎たらしいけど求心力があり、頼りになる上官は、私はオスカーを取った「レイ」の彼より良かったです。
他の新兵たちもみんなみんなとても良かったです。私がこの作品を大好きなのは、下品でバカなこの子達を、とてもとても愛しく感じたからです。拍子抜けして帰国した彼らですが、きっときっと、誰も殺さなかったことに感謝する日が来るでしょう。そういう人生を送って欲しいと願わずにはいられません。
02月17日(金)
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