ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[928178hit]
■「四月の雪」
そうやって葛藤が希薄なまま、二人は打ち解けたと思ったらすぐベッドイン。この時のシーンは二人とも戸惑いが感じられて良かったですが、その戸惑いは、翌日にも引き継がれるはずですが、こういう異常な状況下で結ばれた男女の複雑で深い心理描写はありません。特に躾の行き届いたお嬢さん育ちを思わせるソヨンは、もっと夫ある身で他の男に抱かれたことに、ある種の喜びと後悔の入り混じる、複雑な女心があっても良さそうですがそれもなし。事故で対向車の相手が死んだことは、二人には直接関係ありませんが、その事実の上の関係であることにも、この人たちは一切頓着しません。悪いと思いながらとか、やはりいけないことだとか、そういう人の持つ倫理観との葛藤が観るものの共感を呼ぶのだと思うのですが。
極めつけはインスの妻が意識を取り戻し、ソヨンの夫が亡くなってしまう際のお通夜に、出席者が寝ているおばあさんだけなこと。いくら家から遠く病院内であげたかも知れませんが、ありえません。夜通し親兄弟から親戚縁者まで賑わうものです。ソヨンの夫が不貞をしての大事故を起こした家の恥晒し者だから誰も行かないというのなら、尚更一度も夫の親が出てこないのは不自然です。
結ばれてはいけない状況下であっても、形は不倫であっても、インスとソヨンは人からのそしりは少ない状況で、スタート地点から観客の同情を呼びます。インスの妻のふしだらさをビデオで強調、「煙草を頂戴」と病人が夫に言う様子など、意識して堕落した妻に見せています。彼らの夫と妻は学生時代からの関係だとわかりますが、そのことは「ハッピーエンド」でも描かれています。この作品ではこんな情けない夫なら妻も浮気がしたかろうと共感も出来、その情けない夫を演じるチェ・ミンシクの絶妙の演技が、情けなさの中のうらぶれた哀愁を感じさせ、観客に同情心を駆り立てましたが、インスは妻に不倫を問うこともなく、何事もなかったように接っし、あくまで優しく理解のある夫です。でも私には優しさではなく優柔不断で女々しい男に見えました。
ラストはもしかしたら、インスは妻と別れたのかもしれません。荷造りしている場面が挿入されていました。ラストは晴れて二人はを予感させますが、これってハッピーエンド?。切なさが大幅に減ります。やはり不倫は結ばれなかったり、結ばれても何もかも捨てて、石持て追われてもあなたと二人だけ、という状況で終わらねば共感出来ません。やることはやってしまっているので、結局は自分たちの配偶者と同じ穴のムジナではないでしょうか?メリル・ストリープが「恋に落ちて」でデ・ニーロに言ってたでしょう?「セックスしてどうなるの?後に別れが待っているだけよ。」この作風なら、エッチなしの方が心に残ったと思います。
09月24日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る