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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ヴェラ・ドレイク」
警察に逮捕された後のヴェラに対する夫スタンの、毅然とした夫らしい強い包容力が素晴らしい。扇情的に描くことなく、夫婦の絆の強さを表現してあまりあります。観た直後は、弟フランクの妻の美しいジョイスや、ヴェラが仕事に通う家庭のやはり着飾った美しい婦人たちの心無い俗人ぶりと、清貧の人々との対比があまりにくっきりなので、ちょっと通俗的に思いました。しかい時間が経つと、本当に人生に必要な物はなんなのか、あれも削ぎこれも削ぎ、あなたの人生にかけがえのない物は何なのか?やはり観客に監督が問いかけている気がするのです。その答えが娘エセルの恋人レジーの、「こんな素晴らしいクリスマスを迎えたのは初めてだ。」の、言葉に集約されているような気がします。

イメルダ・スタウントン初め、演技者全てが素晴らしい!リーの演出は独特で、役者に自分の役柄の造形のみ伝え、長いディスカッションとリサーチを求め、筋は伝えないそうです。そして演じるその日に筋を伝え、即興のリハーサルから撮影に移るそうです。本当に役柄と俳優が同化しているように感じました。みな実力派の俳優さんでしょうが、役者の実力を存分に発揮させるのも、監督の力量なのだと感じました。情に流されず共感も理解もできる作品です。心に知的な作品でした。

08月06日(土)
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