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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「海を飛ぶ夢」
そしてロサなら自分を愛したことを誇りに思い、子供を支えに生き、また誰かを愛することでしょう。愛した人を看取るのは、その人たちに合った時間の長さが必要なはずです。これがフリアなら、残された夫は妻の介護の時間が短すぎ、そのことを受け入れ難いはずです。28年介護してきたサンペドロ家の人々が、家を出て行くラモンを見送る姿の痛切さがそれを語っています。
一番印象に残ったのは、ラモンが空を飛ぶのを夢想する場面です。ラモンの目線で空を飛ぶ雄大さに、空を飛びたいなど思ったこともない私が、思わずこんな風に空を飛べたらと心を躍らせましたが、それはきっとラモンの心が私の心に入ってきていたからだと思います。ハビエル・バルデムは、謎のベネチア銀獅子賞のトンデモ映画(でも好き)、ビガス・ルナの「ハモン・ハモン」しか観ていませんが、実年齢より20歳ほど年上のラモンを、ほとんで顔の表情だけで演じ、熱演する場面もあまりないのに、切々と彼に共感する自分を感じました。外へ出ないラモンの目は色が薄くしてあり、体格の良いバルデムの体も、筋力の落ちた様子に見えるよう工夫してあり、細部に行き届いた演出でした。静かですがスケールの大きい、年数を経ても輝き続ける作品かと思います。
05月12日(木)
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