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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「大統領の理髪師」
「フォレスト・ガンプ」を彷彿させるシーンが出てきますが、「〜ガンプ」がアメリカ史を寓話的に描いていたのと同じ香りを、この作品にも感じます。そしてそれに拍車をかけるのが、数々の懐かしいエピソード。ハンモが息子の名前をつけるのに占い師に診てもらいますが、韓国人はとても名前を大切にし、ちゃんと親の名前や本人の生年月日を入れ、大半の人が専門家につけてもらうのです。私や夫、子供達もそうです。ナガンも飲まされた怪しげな煎じ薬ですが、これは私にも思い出が。よく腹痛を起こす私に、ある時期日本で暮らしていた曾祖母は、何やら半紙にまじないを書いたかと思うとそれを燃やし、何かで煎じてコップ一杯飲まされました。それで本当に治ってしまうのです。そんな非科学的なこと、今は韓国でも在日でもないのでしょうが、当時の韓国は健康保険制度が確立しておらず、昔からの漢方薬は元より、まじない・祈祷がまかり通っていたはずです。今の発展した時代からは考えられないようなことですが、韓国で大ヒットしたのは、こういったエピソードの数々に、当時の怒りだけではない、良きこともあったのだという懐かしさを、観客に思い起こさせたからに感じました。
ガンちゃんとムン・ソリは言わずもがなの好演ですが、ナガンを演じるイ・ジェウンがとても良いです。父の愚かな忠義心のため歩けなくなったナガンですが、一度も父を責めません。父に背負われ治療法を求め全国を歩いたナガンですが、二人のお互いを思う愛の深さを感じさせ、父と息子の人生での一番の日々のような、柔らかな光を感じさせました。
竹島問題で日の丸を燃やす韓国の人をテレビで見ながら、やっぱり私は韓国では暮せないなと苦笑いしていましたが、この作品のような成熟した過去の振り返り方が出来る民族なんですもの、あの放送はきっと一部の人だけ、マスコミが誇張しているのかもしれない、そんなことを思わせてくれる作品です。監督・脚本はこれが初演出のまだ36歳のイム・チャンサン。次もとても期待出来そうです。
04月07日(木)
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