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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「カナリア」
母が教団の人間と自殺したと知って、光一は自暴自棄になります。やっと探し当てた祖父にまず由希が先に会いますが、祖父の語る光一の母が泳げるようになるまでの子供の頃の話を聞き、娘のように孫(妹)では失敗しないと語る姿に、「あんたは私の父親といっしょや!」と由希は叫びますが、この事柄で由希に祖父をモンスター扱いして叫ばせるのには無理があります。そして祖父と対面する光一の頭は真っ白になっています。これは母の死を知って一瞬の内になったと解釈しましたが、これは思いっきりはずしました。苦悩の表現というより、やりすぎ。一瞬にして、私は冷めてしまいました。その兄を見て、妹は何の疑問もなく抱きつき、3人一緒に手を携えて生きていこうとするラストは「誰も知らない」に似ていますが、最後に生きる希望を感じさせた「誰も知らない」に比べ、こちらは収集がつかなくなって尻すぼみになった感があります。


途中に出てくるレズビアンカップルは意味不明。オウムの件はまだ生々しい記憶が世間にもあり、デリケートな問題なので切り込み方に躊躇してしまうのはわかりますが、それなら中途半端にあれもこれもと手を出さず、光一と由希二人の心にだけ焦点をあてて描けば良かったと思います。出演者は総じて好演ですが、特に子供二人が良いです。谷村美月は、幼い中にハッとするほど女心を滲ませるかと思うと、また思春期の少女に戻っていき、光一にとって母となり恋人となり友人となる由希をこれ以上ないほど熱演しています。観て損をする作品ではありませんが、本当に惜しい出来ではあります。

03月21日(月)
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