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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ネバーランド」
バリにも疑問が残ります。普通他人の子が愛しいと思うなら、妻がいるのだから、自分の子供を欲しがって当然ですが、彼にはそんな素振りは見えません。彼には子供がありませんでしが、望んでも叶わなかったのか、いらなかったのか、その辺の描写はありません。夫婦は寝室を別にしていましたが、真っ暗な寝室に入るメアリー、明るい野原のような情景に入っていくバリの対比は、二人の心を映しているだけではなく、セックスレスも表していたように思います。ラスト近く、唐突にシルヴィアを愛していたと語るバリですが、男性として彼を愛していたシルヴィアに対し、女性としてより友情を感じます。妻メアリーもシルヴィアも、バリにネバーランドは連れて行ってもらうのが願いでしたが、実現したのはシルヴィア。何故メアリーではなかったのか、私には明確に答えが見出せず不満でした。

そして一番重要なのは、確かに手堅い演技でしたが、この役のデップにあまり魅力を感じなかったのです。あんな駄作の「シークレット・ウィンドウ」ですら、彼の魅力は際立っていたのに、この役は彼でなければとは感じません。トム・クルーズでもディカプリオでも、ニコラス・ケージだって想像出来てしまいます。彼と相性の良いティム・バートンならどうだったろうと、作風も相まって、少し思ってしまいました。

この二人に比べて、妻メアリーは理解も共感も出来ます。妻と言うより夫のマネージャーの如く、表立って内助の功で尽くすメアリーですが、それも変わりゆく夫婦関係に、夫にとっての自分のベストの立場を模索してのことで、本心はシルヴィア親子のように、笑いと安らいだ気持ちを夫と分ちたかったと思います。そして家でもいつも寸分なく着飾っている。乾いた心を隠すようです。演じるのが、安定した演技を見せますが、華に欠けるラダ・ミッチェル。洗いざらしの服をまとっても、今回も白百合のような清楚な美しさのあるケイト相手では、バリの心も揺らぐだろうと思わせます。しかし、夫の気持ちを掴みあぐねて、彼の日記を盗み読むシーンでの、普段着姿のメアリーは、とても美しいのです。シルヴィアのような日常を送っていれば、彼女も豊かな美しさを放つ人ではなかったか、そう感じました。バリと別れた後、「ピーターパン」の初日に駆けつけたメアリーが、「あなたにこの話をかかせたのは、あの人たちよ」と、そっとバリにキスするシーンは、妻として自分では果たせなかった無念さより、心よりバリを思う気持ちが現れ、良いシーンでした。私の疑問は、メアリーを的確に演じたラダ・ミッチェルから引き出された部分が多く、「マイ・ボディガード」での意外な好演と相まって、すっかり彼女のファンになりました。

こういう枝葉の部分の良し悪しが、作品の印象を左右する場合が多いと思いますが、あくまで私が引っかかっただけのこと。多くの方は、返って胸に沁みたり取るに足らない部分かと思います。何故私は映画が好きなのだろう、映画を観るのだろう、そんなぼんやりとした思いが、そうなのか、生きる希望やくじけない心が欲しかったのかと、ラスト、信じれば亡くなった母が見えると答える、ピーターから教えてもらいました。良き作品であることは間違いありません。どうぞたくさんの方、ご覧下さい。

01月19日(水)
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