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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「お父さんのバックドロップ」
演じる南果歩は、都会的な今までのイメージをかなぐり捨ててのまさかの怪演。何故かとても楽しそうです。宇梶剛士は、強面の容貌の中に見える優しさと男らしさが魅力。決して演技が上手いのではないのですが、自分の持ち味を最大限に出すことで、乗り切っています。ネイティブ関西人の中に入って、違和感のない関西弁でした。神木君は言わずと知れた、現在NO.1の名子役。今回も賢さと繊細さの表側と裏腹の、子供らしい親への屈折した気持ちを好演。意外な好演の田中君は、いてるいてる、こんなごんた(やんちゃ)な子、と言う感じで、とても可愛かったです。何でも上手く出来なくて、監督に相当鍛えられたそうです。その甲斐がありました。南方英二は、出てくるだけで、私は嬉しいです。生瀬勝久は、いつもながら名脇役ぶりです。憎々しく演じているのに、演じている社長の本心を的確に観客に伝えるのがすごく上手です。彼の演技は、いつも作品の良いスパイスになります。

他には古参レスラーがバカにされたスナックの客に向かって叫ぶ「お前がプロレスの何を知っているのだと!」という言葉。今はK-1やプライドなど、真剣勝負を売り物にした格闘技がもてはやされている中、筋書きのあるプロレスには、いかがわしさがつきものです。しかし昔府立体育館で生で全日の試合を観たことのある私は、ブルーザ・ブロディに鎖で追い掛け回されて逃げるも、彼は細心の注意を払っていたので、誰一人観客には怪我をせず。ブッチャーやテリー・ファンクの技の応酬と本物の流血とに、感動を覚えた私は、軽々しくショーとは呼べないものを感じたものです。本作では、このいかがわしいショーに魅せられ心と体を賭けた、男の美学も感じさせます。但しプロレスシーンは突っ込みとあっさりが満載。清らかな優しい心で観てください。

監督は初作品の李闘士男。テレビ出身の人で、もっとスタイリッシュな作品を撮っても良かろうに、泥臭くファンキーなこの作品は、大阪出身の監督の、故郷への愛を感じさせます。

脚本は何と「血と骨」で私を大いに落胆させた鄭義信。よっしゃ、チャラにしたろう!

12月10日(金)
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